辻直人は「お祭り男」と称され、チームもリーグも盛り上げている。一方で辻は、キャプテンとして何をすべきなのか自分自身と向き合い続けてきた。その重責を背負うことに、苦しみがなかったわけではないだろう。それでも、悩みながら自分なりのキャプテン像を探している。新たなシーズンを迎える辻に胸の内を聞いた。*9月3日取材(単独インタビュー)
「今シーズンはありのままでやってもいいかな」
──在籍4シーズン目、キャプテンとしては3シーズン目を迎えます。いきなりですが、意気込みを教えてください。
キャプテンとしての自覚も出てきたと言ったらおかしな話ですけど、遠慮することなく「自分がキャプテンだ」と胸を張って言えるシーズンにしたいなと思います。バスケットのスタイル自体は大きく変化しないですし、昨シーズンまで自分たちがやってきたことを、うまく今シーズンにつなげられたらいいかなと。そのためにキャプテンとしてできることをやっていきたいですね。
──最初に意気込みを聞いておいてなんですが、私も含めてメディアやファンは「辻選手はキャプテン!期待してます!」みたいに背負わせすぎていると感じます。そのあたり、どう思っているのかなぁと。
やっぱり、キャプテンということを考えずに、楽にやりたいというのが本音ですね(笑)。でも、そうは言っていられない立場です。でも、そう考えなくなってきたかなぁと思いますよ、徐々に。
群馬で最初にキャプテンになった時も、「キャプテンじゃなかったら、もっとストレスなくできるだろうな」と思うこともありましたけど段々となくなってきて、今は自然とキャプテンである自分が板についてきたというか。やっと受け入れられるというか。馴染んできたって感じですかね。
──以前は、無理してキャプテンをやっていたみたいな部分もありました?
無理してというか、頑張っていたって感じですね。エゴを抑えてやっていた自分はいました。正直なところ、やっぱりストレスはありますからね、キャプテンって。キャプテンの捉え方は人それぞれで、もともとキャプテンシーがある人にはストレスはないと思います。
僕はルーキー時代からずっと篠山(竜青・川崎ブレイブサンダース)さんがチームを引っ張る姿を見ていて、そこにニック(・ファジーカス)もいました。当時は若かったのもあって、チームのことよりも自分のパフォーマンスにフォーカスしていましたし、それをチームからは求められていました。逆を言うと、自分のプレーの良し悪しで、メンタルも左右されていましたけど、群馬に来てキャプテンになってからは、自分のプレーよりもチームファーストで考えられるようになりました。
──いま話に出ましたが、やはり辻選手にとってのキャプテン像って、篠山選手なんですか?
そうですね。やっぱり、ずっと見てきましたから。篠山さんみたいにならないといけないというよりも、そうなれたらいいなという感じですね。篠山さんは、自分が意見を言い続けて引っ張るというよりも、ここぞの場面で意見を言ってくれたので、その重みが身に染みていました。そこから川崎を退団して、広島ドラゴンフライズに移籍して2年目でキャプテンをやりましたが、もう探り探りでしたね。
──あの時は、ドウェイン・エバンス選手が一緒に引っ張ってくれた、と以前に話していましたね。
本当にそうでした。川崎でいうニックみたいな感じでやってくれたので、助かりました。群馬も2年目でキャプテンになりましたけど、やっぱり探り探りでした。昨シーズンは慣れてきたのもあるし、メンバーも変わらず、みんなのパーソナリティーも分かっていたので、やりやすかったですね。今年はみんなをもっと理解できているので、より自分を出せるかなと思います。
──そう考えると、他の選手に頼ることもできるようになってきたのかなと想像します。
そういうこともできる余裕が出てきたと思います。「自分がこれをやらなければいけない!」というのがなくなってきました。これまでは、キャプテンとしてファンの皆さんにどう見られるかよりも、チームメートにどう見られてるのかなというのを気にしていました。「自分はちゃんとキャプテンをできているのかなぁ」とか。でも、本当に今シーズンは、そういうのがなくなってきて、ありのままでやってもいいかな、別に気にしなくていいかなって。
──メンタルもいい状態で臨めそうですね。
メンタルは、さっき話した川崎の時に近いですね。何を言ってもみんなが受け入れてくれている安心感があります。自分が先頭を切って発言しなくても、それぞれの意見をまず聞いて、足りないところを自分が補うとか、足りないと思ったことはチームメートに言っていけばいいと思います。特に今シーズンは、全員が責任感を持たないといけないと思っています。

「ワクワク感を持ってもらえるようなプレーを見せたい」
──ベテランと呼ばれるようになってきましたが、自身のプレーが変わってきたと感じますか?
僕自身は「競争に負けたくない」という気持ちがあるうちは全然できると思っています。でも、自分のことを俯瞰的に見れるようにもなってきましたね。若い頃との違いを感じることもあるけど、それを客観的に見ても、まだまだやれるなという感覚があります。とはいえ、起用方法は自分が決めるわけではないので、それに対する危機感や、メンタルは常に持っておかないといけないと思います。
──キャリアを重ねる中で、3ポイントシュートだけではなく、ハンドリングやパス、ディフェンスと武器が増えてきました。その中で、気持ちとして3ポイントシュートへのこだわりは、変化しているのでしょうか?
3ポイントには、絶対にこだわらないといけないですね。ただ、シーズン終盤で3ポイントのランキングの上位に自分がいると、どうしても気にするようになっちゃうから、めっちゃストレスになります(笑)。今は本数をしっかりと決めたいなと。もちろん確率よく決めないとダメですけど、ケガをして離脱したシーズンを除いては毎年100本以上は決められているので、そこは今シーズンも目指したいですね。
──3ポイントシュートにこだわった上で、他のプレーも見せていきたい気持ちがあるということですね。
「シューターだから、もっと打てよ」って言われるのも理解してます。でも、僕はその枠に収まりたくないですね。シュートが上手い選手が多い中で、シュートだけでは生き残れないから、いろんなプレーを磨いていきたいという思いがあります。幅は広げていきたいですね。
──昨シーズンの記者会見で何回か、辻選手に打たせるセットプレーについて聞いたことがありましたが、そのようなセットでは、かなりの高確率で成功させていました。セットではない流れの中でのシュートとは集中力が違いますか?
違いますね。シュートしか選択肢がないので。時間がないシチュエーションもあるし、「自分が打つしかない!」と腹をくくって打つことだけに集中できます。
──少し意地悪な質問になってしまいますが、それを聞くと他の選択肢よりも3ポイントシュートに注力した方がいい、という考えも出てくるかなと……。
結果的に、ちょっと矛盾しますけどね。ただ、シュートは調子の良し悪しがあって、その試合では入らないから交代ってのが一番嫌なんですよね。そうだったら、もう5分とか10分の出場で終わってしまう選手になるから。それだったら、チャンスメイクもできて、チームメートが気持ちよくプレーできて、「こいつがコートにおったら、安定感があって良い流れでオフェンスできる」と思ってもらえる選手になりたいです。
──確かに、そうですね!では最後に「今シーズンの辻直人のここを見てほしい!」というところは?
レギュレーションが変わって、どのタイミングで自分が出るか分からないし、どれだけプレータイムをもらえるか分からないです。だから、少ない時間で、チャンスをものにしないといけない。自分が出ている時間帯は良いリズムでバスケットができたらいいなと。
ボールを持ったら何かが起きる、いろんなチャンスが生まれたり、自分がシュートを決めたり、とファンの皆さんにワクワク感を持ってもらえるようなプレーを見せたいですね。僕が繋ぎ役になったら、やってても面白くなさそうな顔をしてると思うんで(笑)。そうならないように積極的に自分の良さを出していきますね。


